家族という小さな社会の変革
家族は、人が生まれ育ち、また住み育て、人生を過ごしていく基盤となる場所・生活の基礎であり、社会の原点でもあります。
かつて家族は、役割分担が確立していました。父は仕事にでかけ、母が家を守り、子どもは子どもらしく外で遊ぶ。しかし現代の家族は、一人一人の充足感が優先されるようになりました。家族はそれぞれが外の社会に参画し、個人の幸福を求めています。しきたりに沿ったかつての家族像はほとんど見られなくなり、家族の在り方や暮らしも多様になりました。それでも多くの家族はバラバラにならず維持されています。それは、家族がそれぞれを支えあうための新しい機能を持ち始めているからに他なりません。
今確かめて、新たに紡ぐ「家族の絆」
失われた昔の風景が、現代に映りこむ
目に見えないものを大切にすること
何を失い、何を忘れてしまったのか?
1.家族写真を撮る
核家族が多くなり、個人は忙しく。三代揃った写真を撮る機会がない。
2.子どもの遊び
近所の子どもが大きい子も小さい子もたくさんで遊ぶ。ケンカの加減も小さい子にハンデをあげることもそこで学ぶ。
3.兄弟を育てる
両親が忙しいとどうしても上の兄や姉たちは下の子の世話をしなければならなかった。嫌とは言わない、大家族の在り方。
4.家族で食事を取る
肩が並ぶ近さで食事を一緒に取る。作法や礼儀、食べ方を教わった。
5.家仕事
親の他に祖母なども子どもに文化や歴史を伝えた。家仕事なども、世代を超えて伝えるふれあいがあった。
6.災害のとき
かなしみを共有し、家族の絆を知る。失った家を思い出に、つながりは忘れない。人の真の力。
7.生命を祝福する
生まれた子を喜ぶ心、感謝、情緒。愛して、慈しんで、育てて一緒に生きる。
8.没命後
亡くなった人を思い出し尊び、供養する。先祖をおもんぱかり、忘れない。何度も繰り返して養われる先祖意識。
9.門出を祝う
結婚、出発、めでたい日に喜んで送り出す。家意識を新たに、家を継承する覚悟を持つ。
家族のカタチに正解はないからこそ
三世代同居が否定された時代
かつて、祖父祖母世代との同居は、「子育て」にマイナスだと指摘されていました。例えば、祖父母による溺愛、世代間の育児観・しつけ観の対立など…。当時は新しい住まいのカタチとして、全国に建設された団地という居住空間がブームになりました。そして団地住まいは、核家族的生活様式の広がりを加速したのです。
三世代同居、脚光を浴びる!?
しかし、高齢社会の到来によって、三世代同居が見直されるようになりました。以前とは異なり、子育てへ祖父母世代の影響がプラス面から語られるようになりました。子どもの情緒を安定させ、思いやりを育てる。伝統文化が継承されやすい。母親の社会参加を容易にする、などです。つい先頃まで同居を否定されていたことを考え合わせると、「何が○で、何が×か」を簡単には決め難く、子育てには正解がないのだと気づかされます。
新しい視点の同居
三世代別居・同居という新しい住まいの形があります。住宅は分かれていて、しかし同じ敷地で通路などでつながっている形態です。別世帯という意識と同居という気配り。どちらも叶えることをめざした住宅。正解はなくても、正解を探し続けることは間違っていないのです。